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「平坂の事は気にするな...」

酒々井の気持ちを軽くしようとして言った言葉に酒々井は意外そうな顔をした。おそらく普段の平坂が自ら進んで人の為に動くようなタイプではないからだろう。

酒々井は平坂の想いに気付くだろうか？

一回り離れた俺よりは平坂の方が酒々井には相応しい。分かっていても譲れない。

「仕事は今日一日場所取りするために調整してあったんだろう？」
「は、はい」

身体を温めるよう勧める俺に、酒々井の表情が曇る。

「……は、はい」

一人だけ休む訳にはいかない。酒々井がそう考えているのは手に取るようにわかる。
今日の為に遅くまで残って仕事を調整してきたのだから、むしろ身体を温める時間ぐらいはしっかり休んでもらいたいのだが……
そうやって周りを気遣うのも酒々井らしい。

「もちろん戻ってサポートしてもらえると助かる」

酒々井が俺を注視したまま動かなくなって、無意識に笑い掛けていた事に気が付いた。
時間にしてほんの僅か。酒々井ははっとしたように息をのみ、慌てて俺から目を逸らした。

「もも、戻ります」

さっきから酒々井は吃りっぱなしだ。