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桜 舞う

第2章 おまけ

自己評価が低くネガティブな酒々井には直接的な言葉で伝えなければ好意は伝わらないだろう。
とは言え、強引にでも食事の約束は取り付けた。さすがに会社の上司という枠だけでは思えなくなったはずだ。
後は小動物並みに強い警戒心をどうやって解くか……

焦っても良い事はないと分かってる。だが酒々井に好意を抱いてるのは平坂だけじゃない。酒々井がそいつらの想いに気付かないよう、彼女を振り回しておきたい。

酒々井がその目に写すのは俺だけで良い。意識に留まるのも、心を悩ませるのも俺だけで……


非常階段からフロアへ出て真っ直ぐ自分のデスクへ向かう。一斉に集まる視線に島を見渡し、全員に声を掛けた。
「酒々井は身体が冷えていたので第二会議室で休んでもらってる。用事があるヤツはそっちに聞きに行け。今日は寒い。仕事が終わったヤツから酒々井を誘って平坂に合流してやれ。遅くとも全員六時には花見に行くぞ」
「はい」
「分かりました」
「了解です」
各々からの返しに頷いて残りの仕事に取り掛かる。
俺が誘いに行ければ良いが、おそらく酒々井は休んでいられなくて紅茶を飲み終われば早々に会議室から出てくるだろう。一度手伝い始めれば仕事が終わったヤツに誘われても酒々井が途中でやめて花見に行くことはない。運が良ければ一緒に会場へ行く事も可能だろう。

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