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桜 舞う

第1章 桜 舞う

あぁ、今日の仕事場所取りだった。

同時に気付いて、一人落ち込む。
さっき課長に認めてもらえた時は嬉しかったのに、もう自信がない。

どうせ私なんて……

そう考える思考回路は学生の頃には出来上がっていて、簡単には修正出来ない。

平坂さん、大丈夫かな。たくさん着込んでる感じもなかったし、第一仕事、急に離れたら困るよね……
私は一応朝からその予定だし、誰にも迷惑掛けないんだけど……

せっかく課長自ら迎えに来てくれたのに、ここに居ちゃいけない気分になってきた。
少し身体もあったまってきたし、お茶飲んだら平坂さんと交代しよう。

そんなことを考えていたら、ノックの音がして課長が帰って来た。手には最近私のお気に入りのホット生姜ミルクティと缶コーヒー。

「飲んで身体暖めろ」

そう言いながら缶を差し出された。

「……あ、ありがとうございます」

一瞬迷ったものの、お礼を言って缶を受け取る。

何で……
何でこのミルクティが好きだって知ってるの?

少しピリッと生姜の香るミルクティ。一階の自動販売機で売ってるのしか私は知らない。

課長、わざわざ下まで降りて買ってきてくれたの?

そう思うだけで、胸がフワリと暖かくなった。
プルトップを開け、口元に近付けると生姜とミルクティの甘い香りが鼻喉を擽る。
一口飲んで暖かい甘みに頬が緩む。

ほぁー……幸せ……

クスリ、と聞こえた笑い声。
斜め向かいに課長が座っていること、忘れてた。
思いっきりだらしない顔、見られ……た。

一気に顔が熱くなる。

え、でも今、課長が笑った?

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