テキストサイズ

君と僕。

第8章 君と僕と出張

「え、出張...ですか?」

「うん、1週間くらいのね。台湾での支店視察を今回は社長自ら行くみたいで...」

「秘書の時雨さんも行くことになった、と」

「うん」

インスタントのコーヒーを渡すと、ソファの上でいじけたようにコップに口をつける。
時雨さんと暮らしてしばらく経つが、1週間も離れたことはない。

「れ、蓮君...台湾旅行興味ある?」

「僕も講義ありますからね?」

「うっ...」

ソファの上で膝を抱えてしまう23歳男性。
僕だって淋しい。
毎日一緒にいるのが当たり前だったし。

「頑張ったら、また一緒にでかけましょう?」

「うん」

ソファの下から顔を覗き込むと、不服そうに頷く。

「台湾の話、沢山してくださいね?」

「...ん」

「今日のご飯、時雨さんの好きな春巻き作りますから」

「ハンバーグも食べたい」

「食後にプリンも付けましょうね」

寂しがり屋な猫のように僕に抱きつく時雨さん。
肩におでこを引っつけてるから、首筋に髪が当たって少しくすぐったい。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ