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棺の城

第6章 第三章・城と歴史

はっ、と

「お客さん」が何かに気づく

恥ずかしそうに視線を僕からそむけて

背を向ける

お城の屋上から見える街

その街を守る、騎士の衣

豊穣と繁栄の象徴

腰の部分にエニシダの紋章が抜かれて

それがくるりとひるがえる

「本当に、聞きたいのか?」

「お客さん」が、背中を僕に向けながら聞く

はい、聞きたいです

「そうか…」

短く、切望と絶望の混じった声

しゅるり、と絹の擦れる音がして

女性のシルエットが浮かび上がる

背中から臀部にかけて

ムチで打たれたような鋭いミミズ腫れのような跡が残っていた

華奢な肉体にそれこそ紋様のように、入っている

「私と、彼女は」

「その昔の戦争の生き残りだよ…」

せんせいの顔が今まで見たことのないような不機嫌な顔になっていた

「はじめてくれ…

できればキミには、一番いい眺めで見ていてほしい…」

今にも泣きそうな引きつった笑顔を

「リリィ…」

せんせいがはじめて、「お客さん」のことを名前で読んだ

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