4月は君のぬくもり
第1章 プロローグ
ここは、とある県立高校。
桜の蕾もふくらみかけた今日、卒業式が行われていた。
「一同、起立」
サッ…
マイクで告げる声の後、ピアノの音色が体育館に広がった。
「淡い光の中に♪〜
山々は萌えて♪〜……」
保護者や教師の見守る中、卒業生による合唱が始まる。
晴れの袴に身を包んだ私は、音楽教師歴二年の堀江由衣(ホリエユイ)
二十四才。
今日は私も大役で緊張しているけれど、やっぱり嬉しさの方が勝っていた。
だって、一緒にこの日を迎えられたのだから。
晶午(ショウゴ)
進むべき道が決まって、ほんとに良かったね。
だから最後ぐらいは堂々と歌ってよ。
まぁ照れ屋のあなただから、目を閉じてじっと聞いてるだけでしょうけど。
同級生達の歌声を。
私の弾く伴奏と……。