4月は君のぬくもり
第2章 彼の秘密
私は食事もそこそこに、教室へ上がってきた。
お昼時間特有の、ガヤガヤした雰囲気が廊下まで響いている。
私は教室の入り口から中をそっと覗いてみた。
女子はいくつかのグループに別れて楽しそうにお弁当を食べていた。
男子は食べ終わった子からトランプをしたり、携帯をいじったりしている。
津田君は…窓際の壁にもたれて、チャラ系の青山君達とパンをかじりながら、17才の少年らしく、楽しそうに笑っていた。
輝いていた。
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回想
『津田晶午は1、2年生と僕が担任をしていましてね」
「そうでしたか」
「ええ、幼少期に父親が他界して母親と二人で暮らしていたんですが、あの子が高校に入る少し前、今度はその母親が恋人を作って家を出て行ってしまったんです…』
『えっ…では彼は今…』
『アルバイトをいくつも掛け持ちして、一人で生活しています』
『そんな…』
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「…」
私は何も知らなかった。
津田君が、そんな寂しい思いを抱えて一人で生きていたなんて……。