
神様の願い事
第9章 ねこのきもち
翔「ん、擽ったいよ...」
猫は早起きなんだと相葉くんが言っていた。
翔「ふふ...」
ペロペロと俺の首を舐めて、“早く起きろ”と催促でもしているのだろうか。
翔「早起きだね、おはよ...」
まだ重い瞼を無理矢理こじ開け、俺の首元を擽る智くんに目をやった。
すると、俺の視線に気付いたのかパチッと目が合った智くんはふんわり微笑んで。
翔「智くん...?」
智「おはよ...」
智くんもまだ眠いのか、細めた目をしながら一言発した。
翔「え...、さと」
“おはよう”と挨拶をし終え、智くんは再び俺の首元に顔を埋めた。
埋めたその頭をぐりぐりと押し付け、ぎゅっと俺を掴むんだ。
智「ふふ、あったかい...」
その声は、俺が聞きたかったふんわりとした声で。
智「ふぁ...」
欠伸をしながら俺を掴む手も、いつも見ていたしなやかな手だった。
翔「智くん? 寝惚けてる...?」
人間に戻った事に喜びもせず、裸で俺に抱きついている事に恥もせず。
智「ね、本当に俺を飼ってくれるの...?」
密着したまま顔を上げ、寝ぼけ眼で俺を見ながらそんな事を言う。
翔「え?」
智「言ってたでしょ? 戻らなかったら、俺が一生面倒みるって...」
翔「うん...。言ったよ、当たり前だよ」
寝起きの少し掠れた声で、ボソボソと話す言葉にどんな意味を込めているのだろう。
智「それなら、もう、戻らなくてもいいかな…」
翔「どうして...?」
智「だってそれなら、翔くんがいつか結婚しても、俺もそこに連れてってくれるって事でしょ...?」
翔「結婚て...」
智「欲しくても手に入らないなら、俺はこのままでも...」
“このままでもいいかな”なんて言う智くんは、自分が戻っている事に気付いていないんだ。
智「その方が、俺は幸せなのかな... たまに、奥さんに噛み付いちゃうかもしんないけど(笑)」
俺には通じてないとでも思ってるんだろうか。
まるで独り言のように智くんは呟く。
翔「それってヤキモチで?(笑)」
智「ふふ、うん」
会話だって成立してるのに、智くんは楽しそうに独り言を話してるんだ。
