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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第14章 盗み聞き。


 定時で上がり会社を出ると、近くの喫茶店に飛び込む。「お好きな席へどうぞ」と言われ、店内を見回すと、ガラ空き状態だった。アタシは目立たない隅の方の席に着くなり、スマートフォンを取り出し池田先生へとメールを送る。

 目的を果たしてホッと一息吐くと、ウェイターがおしぼりと水を運んできた。アタシは慌ててメニューを開くと、ウェイターが席を離れる前にコーヒーを指さして注文を終える。

 人前で声を張り上げるのが苦手なアタシは、この水を持ってきてくれたタイミングで注文をしないと、お店の人が傍を通るまで、注文が出来ないからだ。

 ウェイターは注文を繰り返し、アタシがそれに頷くと、席を離れて行く。その後姿を見ながら、アタシはふかふかの椅子の背凭れに背中を預けると、再び安堵の溜息を吐いた。

 薄暗い店内を見回せば、年配の男性が一人、カウンター席でスポーツ新聞を広げながら、カップを口に運んでいるだけ。この時間になると、コーヒーよりも食事をしてお酒を愉しむ人の方が多いからなのだろう。

 アタシはお酒は得意ではない。二十歳の誕生日に、少しだけビールを飲ませて貰った事があるが、コップ一杯程度で酔っ払ってしまい、親には人様に迷惑を掛けるから外で飲まない方がいいと言われた。

 「外で飲まない方がいい」と言われても、どちらにしろ誘われないのだから、心配する必要はないのだが。

 勿論、アタシもあんな苦い物を美味しいと思わなかったので、その日から今日まで口にはしていない。

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