おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第15章 池田悠と言う男(その2)。
最近、忙しくてそんな事も考える余裕もなくて。朝の生理現象としての勃起はあったが、性的興奮としての勃起は久々で戸惑う。
俺は瞬時に気持ちを鎮めようと、今一番頭を悩ませている、患者の医療プランなんかを思い浮かべる。こんな事に使って申し訳ないと、患者に心の中で謝りながら。
そして気持ちを鎮めると、何食わぬ顔をして、AD部の扉を叩いた。すると中から、「どうぞ~」と間の抜けた声で入室が許可される。地下への入口のセキュリティは厳重だが、事務所の扉には鍵が掛かっていないのだ。
俺はドアノブを捻り、扉を開けると坂内部長宛てに書類を持って来た事を告げる。チラっと奥を見ると、机に突っ伏して身体を痙攣させている、森脇さんの姿が目に入った。
「彼女、大丈夫なの?」
俺は書類を受け取った平川君にそう尋ねると、彼は「大丈夫です。彼女の限界は、分かっていますから」と言って微笑んだ。男の俺でも見惚れてしまう容姿。社内の女子社員が一度は寝てみたいと思う男。
こんな男が傍に居たら、森脇さんだって惚れずにはいられないだろう。唯、彼に惚れて辛い想いをするのは、森脇さんだ。
過去に彼と付き合って、嫉妬に駆られて問題を起こした女子社員が、数多くいる。出来れば森脇さんには、そんな風になって欲しくない。