おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第17章 桜の花弁舞い散る夜にアタシの花弁は濡れそぼる。
何とか一週間、頑張った金曜日の夜。新入社員の歓迎会と言う名目の下、AD部全員でお花見をする事になった。山岡さんが場所取り当番を引き当てて朝から出掛けて行ってしまい、ちょっと心細い。
けれど、出張から戻った坂内部長が珍しくずっとオフィスに居たので、いつもの様に、気を失う程攻められる事もなく、就業時間中ずっとオモチャを付けされられる事もなく、平穏に一日を過ごせた。
そして夕方──。
早めに仕事を切り上げた皆さんと、ディスカウントストアで飲み物やおつまみを大量に買い込み、山岡さんが待つ花見スポットへと向かった。
山岡さんはラジオを聴きながら、携帯ゲームをして時間を潰していた様だ。それでも退屈だったらしく、アタシ達の姿を認めると、とても嬉しそうな笑顔を見せた。
"キュン……"
その笑顔に、何故か胸が甘く疼く。おかしいな。ここのところ、こんな事はなかったのに。
これが何なのか、イマイチ分からないアタシだったが、これが「恋」と言うものなのだと、この日知る事になる。平川さんの言葉によって。
山岡さんの陣取った場所は、その公園の結構奥まったところで、殆ど人気のない場所だった。それもその筈だ。殆ど桜の木がない。
「お花見なんじゃないんですか? 桜の木が見当たりませんが……」