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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第17章 桜の花弁舞い散る夜にアタシの花弁は濡れそぼる。


「そんなカタイ事を言うなよ、モリリン! お花は我が部署の紅一点、モリリンが居てくれれば十分っしょ!!」

 そう言って山岡さんがアタシの肩を抱き寄せてニッコリ笑う。その瞬間、アタシの心臓が大きくドクンと跳ねる。それから、胸がドキドキ、ドキドキと高鳴って苦しくなる。

 池田先生は、胸には異常がないって言っていたのに。やっぱり今度はもっとちゃんと診て貰おうとアタシは思った。

「モリーは、部長と室長の間に座ってねぇ?」

 川上さんにそう促されて、アタシは坂内部長と高槻室長の間に座る。「女の子は冷えるといけないから」と、座布団と膝掛けまで準備してくれていた。

 こう言うところは、皆さん優しい。ちゃんとアタシを女の子扱いしてくれる。アタシを「ブス」とか罵った事もないし。寧ろ、毎日「可愛い」とか言われて、慣れていないアタシは、どうしていいのか分からない事の方が多い。

「はい、森脇さん。ビールでいい?」

 坂内部長が、缶ビールを差し出してくれ、そう尋ねた。正直に言って、ビールは苦手だ。何度か慣れる為に頑張って飲んでみたが、どうしても美味しいと思えなかった。それが態度に出てしまっていたのだろうか。一瞬躊躇し、受け取る手を出すのが遅れた。

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