おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第17章 桜の花弁舞い散る夜にアタシの花弁は濡れそぼる。
「おい! お前等、何をやってるんだ?」
コンビニのポリ袋を両手に提げた、坂内部長の声に、はっと我に返る。
「高槻、君は"室長"だろう? 就業時間中に商品を使っているのであれば仕事だが、今は違う。それを分かっていてやっているのか?」
初めて聞く、厳しい坂内部長の声。高槻さんを始めとする四人は、ゴロゴロと石の転がる地面に正座をされられ説教受けている。山岡さんの事だけは、庇いたい気持ちはあったが、何といっていいのか分からない。
「平川、悪いけど森脇さんを送ってやってくれないか? 君もそのまま帰っていいから」
坂内部長はそう言うと、平川さんに何か紙切れを渡した。平川さんはそれを受け取ると、アタシの服を整えてくれる。後ろ髪引かれる思いはあったが、平川さんに促されて、アタシはその場を後にした。
「少し酔い覚ましに歩こうか? お花見、してないでしょ?」
平川さんはそう言うと、酔ってふらふらしているアタシの手を取る。そして、ゆっくりと歩きながら、桜の木が沢山植えられている遊歩道に入って行った。アタシは手を引かれるままに黙って従う。
「もう直ぐ、桜も終わりだね」
平川さんが目を細めて桜を見上げながら、ポツリと言う。アタシも同じ様に桜の木を見上げた。街灯に照らされた桜の花弁は青白く光り、儚げでどこか寂し気だ。ひらりはらりと舞う花弁を見ていると何だか切なくなる。