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第18章 平川拓斗という男(その2)。


 今迄は痴漢に遭遇しなかったかも知れないけれど、それはたまたま運が良かっただけだ。彼女は日を追う毎に魅力的になってきている。それに大人しそうな性格なのは、一目瞭然だ。痴漢の恰好の餌食となるだろう。そんな目に遭わせたくはない。

 けれど……。痴漢をされている彼女を見てみたい気もする……。

 どんな顔をするのか。頬を染めて快楽に身を委ねるのか。それとも泣きそうな顔で俯くのか。彼女の性格上、痴漢の腕を取って駅員に差し出す事は、まずしないだろうな。

 そんな事を思っていると、電車が到着。止まる駅が少ない快速の電車の中は、その中に身を投じるのを躊躇してしまう程に混み合っていた。

 それでも、僕等はその電車に乗り込む。後ろから押され、彼女の身体と密着してしまう。華奢な森脇さんを押し潰さない様、手をついて彼女を守る様にポジションを取ると、電車が動き出した。

 僕は身を屈め、彼女の耳元で「大丈夫?」と尋ねると、森脇さんは小さく頷く。ほんのりとピンクに染まった頬。何となく表情が強張っているのは、人の多い電車に乗っているからなのだろうか。

 彼女が人を苦手としているのは、知っているけれど。どんな類のものなのかは、よく知らない。だが、思った事を言葉にするのが苦手だって言うのは、見ていて分かる。

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