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第18章 平川拓斗という男(その2)。


 焦りを浮かべる男の顔を見降ろし、顎をクイッと扉の方へ向ける。「次の駅で降りろ」と。

 僕達の乗せた電車が駅で止まると、僕は男を電車から引き摺り下ろす。森脇さんも慌てて僕について電車を降りた。僕は男が逃げない様に、しっかりと腕を掴み、素早く駅員を探す。

 駅に隣接した交番へ男を引き渡した後、坂内部長の携帯へ連絡を入れた。この後、森脇さんは状況を訊かれる事になる。僕も訊かれるだろう。訊かれないにしても、彼女を一人で放って置くワケにもいかないので、付き添うつもりだった。

 坂内部長は了承してくれ、「森脇さんを頼む」と言って通話を切る。僕と森脇さんは警官に事情を訊かれ、解放されたのは、一時間後くらいだった。

 話を聞いていて分かったのだが、彼女が痴漢にあったのは、どうやらこれが初めてではなかったらしい。

 唯、自分の様な女の子が、「痴漢をされる筈がない」そう思って言えなかったのだと言う。冤罪で捕まる人もいると聞くから、むやみに疑ってはいけないと。

 そんな話を聞いていて、やはりきちんと言いたい事は言えるように教育していかなければならないなと思った。

「怖かったでしょ?」

 降りた駅の近くの公園のベンチに座り、彼女の背中を撫でながら尋ねる。あれから時間が経った今でも、彼女の身体は緊張で固くなっていた。

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