おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第18章 平川拓斗という男(その2)。
その個性的な彼女が、ヤマの魔法でどんどん綺麗になってきている。メイクを教え、恋する気持ちを彼女に教えたのは、ヤマだ。
ヤマに愛されれば、更に彼女は綺麗になるのではないかと思う。そして自信を持てるようになれば、他人とコミュニケーションも取れるようになる筈だ。
彼女の障害は、努力をすれば治るものだと僕は思っている。完治はしないかもしれないが、それでもかなり良くはなる筈だ。彼女自身も何とかしようと足掻いている。そんな彼女がいじらしい。
「桜……散ってしまいましたね……」
公園の片隅に植えられた桜の木を見ながら、彼女がポツリと呟く。
「週末、天気が荒れたからね……」
今日は週末の天気が嘘だったかのように、穏やかな日差しが降り注いでいる。春特有の霞掛かった空。その空の色も、夏に向けてこれから段々青が色濃くなっていく。
隣に座る森脇さんに視線を移すと、彼女は目を閉じ、春の柔らかな日差しを愉しんでいるかのように微笑んでいた。その顔はまるでキスを誘っている様で。僕は引き寄せられる様に彼女に口付けていた。
軽く口付けて離れるつもりだったのに。彼女の少し冷たい唇に触れていたら止まらなってしまった。彼女の背中に手を回して抱き締めながら、舌を絡め互いの唾液を混ぜ合わせる。