おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第19章 山岡一徹と言う男(その2)。
まあ、そんな事はシモも十分な程、分かっているだろう。その上で、自分が使いたいと思う物を考えているんだろうから。ちょっとマニアックな物が多いけど。その点、王子が考えるデザインは、女の子ウケする商品が多い。見た目が可愛らしく、一見それがアダルトグッズだとは思わないようなデザインだ。それがアダルトグッズへの抵抗感を引き下げ、ちょっと買ってみようかなと言う気持ちにさせているらしい。
アダルト・トイは男が女性に買い与える事が多かったが、今は女性自らも買い求める時代だ。その女性達が手に取り易い、興味を持ち易いデザインと価格。王子の企画する商品はそのバランスが絶妙なのである。やっぱり、色んな女の子を喰ってる経験からくるんだろうか。
それにしても、遅いな。始業時間から二時間を過ぎても、まだモリリンと王子は出社して来なかった。余程大きな人身事故でも起きたのだろうか。電車の中で閉じ込められて、気分が悪くなっていないだろうかと、ちょっと心配になる。俺は坂内部長に理由を聞いていないかを尋ねようと立ち上がった時だった。
「遅れてすみません」と王子とモリリンが姿を現した。王子はモリリンの腰に手を回し、モリリンも王子に寄り添っているように見える。二人の距離が近い。その姿を見て、俺の心の中に何かモヤモヤした黒い霧の様な物が渦巻いた。