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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第19章 山岡一徹と言う男(その2)。


 カワが呑気な声で、「偶然、一緒の電車だったのぉ? 珍しいねぇ」と王子に話し掛けると、王子は首を横に振り、偶然ではなく自分が迎えに行ったのだと答えた。そして居ずまいを正すと、「皆に報告する事がある」と言った。王子の言葉に俺の心がザワつく。何なんだろう。この胸騒ぎは。

「僕とたまちゃんはお付き合いをする事になりました! だから、おもちゃのテストは僕を通してからにして下さい」

 王子はそう言うとモリリンに微笑みかけ、彼女の肩を抱き寄せる。モリリンが一瞬、俺の方を見た様な気がしたが、直ぐに目は逸らされ、彼女は顔を赤く染めると俯いてしまった。

(どう言う事だ?)

 つい最近まで、王子が苦手と言っていたのに。先週の花見の後に何かあったのか? モリリンはあの日、結構酔っていた。その勢いでホテルに行って、やっちゃったとか!? モリリンが本気で好きになってそうなったんだとしたら、それは喜ぶべき事だけど、先週までの彼女にはそんな素振りはなかったのに。苦手な素振りはカモフラージュだったのか? 結局はそこら辺の女達と同じで、王子を選ぶのかよ……。

 俺の心の中で、勝手な憶測やら黒い感情が渦となり俺を飲みこもうと口を開く。こんな感情はいつ以来だろうか。高三の時以来か。

 俺は、皆が二人を取り囲んでヤイヤイ言うのを遠く感じながら、初めて本気で好きになった女の事を思い出していた。

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