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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第19章 山岡一徹と言う男(その2)。


 彼女は俺に女の身体を教えてくれた。柔らかくて気持ちのいい女の肌を。彼女を知ってから、俺の女の基準は彼女になった。俺達は、親父達が話に夢中になっている中、こっそりと抜け出しトイレや店の裏で熱を分かち合った。誰かに見られるかも知れないと言うスリルと快楽に、俺は彼女に溺れていった。

 溺れて周りが見えていなかった俺。今思えば、初心だったからなのかも知れないが、俺は彼女を信じ切っていたから気付かなかった。彼女が親父とも通じていた事を。

 俺は高三になり受験を控えた為、店の手伝いを殆どしなくなった。親父に「可能性を広げる為に、大学へ行け」と言われたから。その頃の俺は、まだ親父を尊敬していたから、言う通りに大学へ進学する為に、勉強に励む事にしたのだ。時間をやりくりして、彼女と会ってセックスはしていたが、店で働いていた頃のように毎日とはいかなくなった。それでも、週に一回は抱き合っていた。だから、俺が店を離れている間に親父と彼女の仲が進展し、男女の関係になっていたのを俺は知らなかった。

 それを知ったのは、俺が受験を終え、ささやかな合格祝いのパーティを常連さん達が開いてくれた時だった。親父が突然、報告したい事があると言い出し、再婚を決めたと言うのだ。そして皆に披露したのが、彼女──俺の初めての女──だったのである。俺はこの時、彼女の裏切りを知ったのだ。

 周りから祝福されている二人を俺が反対出来るワケもなく。彼女は親父の妻となった。俺は自分を裏切った女と一緒に暮らせる筈もなく、大学に入学するのと同時に家を出た。

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