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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第19章 山岡一徹と言う男(その2)。


 俺の願いが通じたのか、それから暫くしてあの女が妊娠したと聞かされた。あの女が産んだのは、可愛い女の子だった。子供を産んでから、彼女は"女"ではなく"母"となった。娘を慈しむ彼女を見ていて、俺は自分の恋が終わったと感じた。女でなくなった彼女に、もう興味は持てなかった。彼女が産んだ女の子──俺の戸籍上の妹は、親父の子なのか、それとも俺の子なのか。それは今でも分からない。知っているのは、あの女だけだろう。

 「ひょっとしたら、俺の子かも」なんて想いもあったのだろうか。妹が生まれてから直ぐに俺はホストを辞め実家に戻り、稼いだ金で以前から興味のあったメイクアップアーティストを養成する学校に通い始めた。学校を卒業し、著名な人の許で修行をしながら、色んな現場を体験した。AVの撮影現場にも行った。そこでカワと出会い、馬が合って仲良くなった。男同士でつるんでいる方が気が楽だったし、また恋をして裏切られるのが嫌で、本気になる事が出来なかった。それでも、性欲は溜まるから、俺はカワと街へ繰り出してはナンパをし、欲望の処理をしていた。時にはカワと二人で一人の女の子を攻めたり、時には四人で楽しむ事もあった。

 当然、火遊びの相手には本気になる事が出来ず、俺は恋の仕方を忘れてしまった。それでも、別に不自由はしていない。俺が異性に向けるべき愛情は、今は妹に注がれている。変な意味じゃなくて。兄として、そして時には父親のような気持ちで、俺は妹を溺愛している。妹もそんな俺に一番懐いている。時々、親父に「どちらが父親だか分からないな」なんて冗談めかして言われるが、その言葉には少しドキッとする。本当に俺の子だったら、親父は何て思うのだろうか。

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