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第23章 ざわつきのアフター6。


 これって、俗に言う「恋人繋ぎ」ってヤツだよね? お付き合いしている男女って、こんな風に手を繋ぐんだ。咄嗟に手が離せなくて不便じゃないんだろうか。アタシが疑問を口にすると、平川さんから「手を離したくないから、こうやって繋ぐんだよ」と言う答えが返ってくる。そう言うものなの?

「ヤマと手を繋いだ時の事を考えてご覧? 離れたくないでしょう?」

 平川さんにそう言われて納得した。確かに、好きな人とは離れたくないよね。でも、アタシが山岡さんとこんな風に手を繋げる日は来るんだろうか。今日だっていつもと変わらない……いや、いつもよりも素っ気ない態度だった気がした。アタシがそう言うと、平川さんは「気のせいだよ」と言って笑った。

 アタシ達は手を繋いだまま、地下階から玄関のある一階へとエレベーターで上がった。丁度、退社する他の部署の人達で、エントランスホールは賑わっている。エレベーターから降りて、平川さんが歩き出すと、その場に居た女子社員から、熱い視線が注がれる。それと同時に、ヒソヒソと囁き合う声が聞こえてきた。

『何なの? あの女。平川さんと手を繋いだりして……』

『あれって、AD部の子でしょ? すんごいブスのクセに、何で平川さんと手を繋いでいるの?』

 突き刺す様な視線と棘のある言葉が、アタシの胸にチクチクと突き刺さる。アタシはそれに堪えられなくて、手を離そうとしたけれど、しっかりと握られていて離せない。そればかりか、平川さんはアタシの手を引くと、肩に手を回し皆の見ている前で、こともあろうにアタシに口付けたのだった。

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