おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第23章 ざわつきのアフター6。
"トクン……トクン……トクン……"
先生の胸に顔を埋めていると、先生の心臓の音が聞こえる。アタシは身動きせずに、その音に耳を傾ける。先生は、アタシをあやす様に、背中や頭を撫でてくれている。先生の心臓の音と優しい手に、アタシの心は次第に落ち着きを取り戻す。
アタシは嗚咽が止まると、泣いていた理由をポツリポツリと先生に話し始めた。先生は、アタシが話終えるまで、抱き締めたまま黙って聞いてくれた。
「そうでしたか……。平川君と……。彼には困ったものですね。山岡君の気を引く為と言って、貴女にそんな酷い事を……」
「確かに酷いんですけど……。でも、それまではずっと優しくしてくれて……」
「彼はね。誰にでも優しいんですよ? それで勘違いをする女性が沢山います。そして人生を狂わされた子もいます。山岡君の気を引く為に、他の男と付き合う振りをするのであれば、彼でなくても構わないでしょう? だったら、私にしませんか?」
先生はそう言うと、身体を離してアタシの顔を見つめた。アタシが、ボロボロの顔を見せるワケにはいかないと顔を背けると、先生の手がアタシの顎を捉えた。先生の方へ向けさせられ、先生の顔が近付いて来る。そんなに近くで見ないで欲しい。恥ずかしさに目を瞑ると、そっと柔らかくて温かい物が、アタシの唇に押し当てられた。
(え……?)
気付いた時には、先生の唇がアタシの唇を包む様に重なっていて、かなり吃驚した。だって……。だって先生はお医者様なのに。何でこんな事を?
「医者である前に、私も一人の男ですよ?」
先生は唇を離してそう言うと、再びアタシに口付けた。今度は、重ねるだけではなく、舌を忍び込ませて……。