おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第27章 アタシの気持ち(その1)。
「ほら、ぼーっとしてっと扉が閉まんぞ?」
警備のお兄さんにそう言われ、アタシは我に返ると急いで社内へと駆け込んだ。それと同時に、背後で岩戸が"ゴゴゴ"と閉まる。いや、扉自体が音を立てているのではなく、天井のスピーカーから効果音が流れてきたのだが。何か変なところで遊んでる会社だなぁ。そう言う会社だから、AD部みたいな部署があるんだろうか。でも、表には出ていないんだよね。アタシみたいな人間を雇ったり、結構、破天荒な経営陣がいる会社なんだなぁと、閉ざされた岩戸を見てそう思ったのだった。
裏口から入ると直ぐに、地下へ下りる階段があったので、アタシは階段前の硝子戸の脇にある、センサーに社員証を翳(かざ)して、扉を開けAD部のある地下階へと急ぐ。一時間も前に家を出たけれど、交番で事情を訊かれて、結局は遅刻だ。明日は、ハプニングがあっても大丈夫な様に、二時間前には家を出た方がいいだろうかなんて考える。まあ、そんなに何度も痴漢に遭うワケないよね。偶々、巡り合わせが悪かっただけなんだ。それに、アタシが二時間前に家を出るとなると、アタシを「守りたい」と言ってくれた、平川さんまでそれに付き合わせる事になってしまう。あ、でも、流石に二時間前だったら、電車も空いているから、一人で出勤しても大丈夫か。なんて事を考えながら長い廊下をひたすら歩き、AD部の前に到着した。
しかし、何でこんなに奥にオフィスを作ったんだろう。別に階段を下りた直ぐの場所でも、エレベーターホールの直ぐ傍でもいい様な気がするんだけど。不可解な会社だなぁなんて思いつつ、アタシはAD部の扉を開けたのだった。