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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第27章 アタシの気持ち(その1)。


「それがさ、モリーの事を女の子として意識し始めたのに、週が明けたら王子と交際宣言しちゃったから……。だから、ヤマも戸惑ったんだと思う。結局、その交際は一日で終わっちゃったみたいだけど……」

 川上さんはそう言いながら苦笑した。アタシは「お騒がせしてすみません」と謝り、更に身を小さくする。平川さんは、これからAD部の中で、アタシに"一日で振られた男"として生きて行かなければならない、なんて言ったら大袈裟かも知れないけど、申し訳ないと思う。

「でも、良かったよ。王子と別れたと聞いたらヤマだってきっと……」

「そうでしょうか……。それじゃあ、何で別れたと聞いたのに、目を合わせてくれなかったんでしょうか? "おはよう"って笑い掛けてくれなかったんでしょうか? あの時のキスは、"酔った勢い"だったんじゃないでしょうか?」

「モリー?」

「アタシ……昨日、あんな事があって、平川さんの事を許せないって思ってました。けれど、今日、痴漢に遭ったアタシを助けてくれたのは平川さんでした。いつもよりも一時間も早く家を出たのに……。ずっと駅でアタシの事を待っていてくれて、陰から見守ってくれていて……。"好きだ"って言われました。平川さんの気持ちを聞いて、正直に言うと心が揺れています。アタシの気持ちが山岡さんに届いたとして、お付き合い出来る事になったとしたら、平川さん、どうなっちゃうんだろうなって……」

 アタシは自分の気持ちを一気に話し終えると俯いた。

「どうもしないよ」

「え?」

「モリーがヤマを選んだのなら、仕方のない事じゃない? 潔く身を引くか、しつこく思い続けるかは分からないけど。少なくとも、モリーがヤマを選んだのだとしたら、どうしようもないと思うけどな」

「…………」

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