おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第30章 高槻雅史という男(その2)。
「やっと、言ったな……。これからは、素直に強請りなさい」
私がそう言うと、森脇は「だって……」と言って私を見つめる。そして、そんな事をすれば辞めさせられると思ったのだと言った。やっと誰かの役に立っているのだと実感し、仕事に遣り甲斐を感じ始めたから、辞めさせられたくないのだと。
その言葉を聞いて、彼女をAD部に引っ張ってきた坂内部長の見る目に驚く。面接時の最後の一言で、インスピレーションを感じただけだと言っていたが、彼の勘はよく当たるのだ。恐らく彼女の中に眠る何かを感じていたのではないかと思う。
見た目のいい男達に囲まれ、快楽を与え続けられていたら、流されない人間の方が少ないだろう。ましてや、今まで性的な快楽を知らなかった身体に、無理矢理覚えさせられた快楽。覚えたてなら、それに溺れても不思議ではない。
しかし、森脇は快楽に溺れるのではなく、遣り甲斐を見出した。これからの森脇には期待が出来そうだ。色んな意味で。社会人として、女性としてどう成長していくのか、非常に楽しみである。女性に対してそんな気持ちになったのは初めてだ。私も年を取ったと言う事だろうか。まあ、森脇とは八つも年が離れているのだから、そう思うのは仕方が無いのかも知れない。