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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第31章 鎮まらない疼き。


 警備室に寄って帰る事を告げる。平川さんとの事があってから、アタシはずっと裏口を使っていた。警備の人とも顔見知りになり、今では記帳をしなくても、挨拶だけで通り抜け出来る様になった。窓口に座っている警備員さんに会釈をすると、警備員さんも帽子を取って軽く挨拶してくれる。今日の窓口に座っている警備員さんは、中々のイケメンさんだった。

 裏口を出ると、部長は近くのこじんまりした洋食屋さんに連れて行ってくれた。ランチの美味しいお店で、よく昼食に利用しているのだと言う。「会社の近くで申し訳ないね」と部長はすまなそうに言うが、お腹が空いているので今から移動するよりも近場の方がいいと伝えると、「そうか」と言って笑った。目尻による笑い皺。優しい目。温かい眼差しがアタシを包み込む。

 入社日に泣いているところを坂内部長に医務室に連れて行って貰った事を思い出す。殆ど裸同然だったアタシの身体を隠す様に、掛けてくれた上着。大人になって初めてされた、お姫様抱っこ。逞しい、坂内部長の腕と胸。そう言えば、医務室でアタシったら部長に対し、大胆な事をしてなかったっけ!? それを思い出すと顔から火が吹き出しそうだ。あんな事をして、あの時のアタシは部長に何を求めていたのだろう。池田先生が戻って来なかったら、アタシは何を言ったのだろうか。

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