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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第31章 鎮まらない疼き。


 お料理が運ばれて来る間、ワイングラスを傾けながら、他愛もない話をする。と言っても、話しているのは殆ど坂内部長だけれど。

 「こんなオジさんの晩飯に付き合わせちゃってごめんね? 実は息子が予備校に通い始めちゃって、平日は家で晩飯を食う事が少なくなっちゃってね……。一人で食べるのが寂しくて、誘っちゃったんだけど、迷惑だったかな?」

 「いえ。そんな事は……」

 「そう? 良かった。それにね、あまり話す機会がなかったでしょう? 君の事を会社に引きとめたのは僕なのに、何のケアも出来ていなかったからね。ずっと気になっていたんだ。どう? 仕事は慣れた?」

 「あ、はい。皆さん、とても良くして下さいますので……」

 「そうか。でも、森脇さんに構い過ぎじゃない? 鬱陶しかったらそう言っていいからね?」

 「そんな……鬱陶しいだなんて……」

 「遠慮はしなくて、いいんだよ。色々と不安な気持ちはあるかも知れないけれど、何かあったらこのオジさんに言いつけていいからね?」

 そう言って坂内部長は、軽くウィンクをする。坂内部長って本当にチャーミングな人だな。自分の事を「オジさん」なんて言っているけれど、アタシは全然そうは思わないのにな。

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