おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第31章 鎮まらない疼き。
顔だってイケメンだし、大人の色気があるし……。それに優しいし、いい香りがする。何か香水とか着けているのかな? 香水の香りに混じった仄かな煙草の香り。ひょっとして煙草を吸う人なのかな?
「部長? あの……。お煙草を吸われるんでしたら、どうぞ」
「え? ああ、有難う。よく分かったね」
「何となく、香りがしたので……」
「森脇さんは、鼻も"敏感"なんだね」
坂内部長はそう言うと、ちょんとアタシの鼻の先を突いて笑った。完全に子供扱いだなと、ちょっと悔しく思う。
「残念だけど、このお店は禁煙なんだよね」
「そうなんですか?」
「そうなんですよ。だから気を使わなくていいよ?」
そう坂内部長は言うけれど、気を使ってくれているのは部長の方だ。多分、毎日ここへランチに来ているワケではないだろうし、馴染のお店は他にもある筈なのに、ここへ連れて来てくれたのは、女性が好みそうなメニューと煙草を吸わないアタシへの配慮なんじゃないかと思う。そう言う事をさり気なく出来る大人になりたい。坂内部長と話をしていて、そう思うアタシなのだった。