おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第31章 鎮まらない疼き。
運ばれて来たお料理は、どれも美味しくて白ワインに合う。気付かぬ内にグラスが空になっていた。もう一寸(ちょっと)だけ、飲みたいなんて思うのは、楽しいからだと思う。食事も、坂内部長のお話もとても素敵だ。部長は空になったアタシのグラスを見て、「もう一杯飲める?」と尋ねた。アタシはここぞとばかりに頷くと、部長は「自分も飲み足りないから、じゃあ、もう一杯付き合ってね」と言って、同じものを頼んでくれた。
一杯で止めておけば良かったのに、調子に乗って二杯目に手を出したアタシ。少し酔いが回って来たのか、身体が熱くなってきた。失礼して、スーツのジャケットを脱ぎ、それでも熱いので袖を捲り上げた。坂内部長がお冷を貰ってくれたのに、それには手を付けず、ワイングラスを傾ける。坂内部長が心配そうに、そして困った様にアタシを見ている顔に思わず胸がキュンとしたのは、酔っているからなのだろうか。
自分ではそこまで酔っ払っているとは思っていないアタシは、ワイングラスに手を伸ばす。すると坂内部長は、「お水にしておきなさい」とワイングラスをアタシから奪い、お水が入ったグラスを握らせた。その時、坂内部長に触れられた手が、熱くなって……。そこから段々熱が身体全体に広がっていく。唯、手を触られただけなのに。それも普通に、グラスを交換してくれただけなのに。何故かアタシの身体が疼き始める。どうしよう。こんな所で。アタシは俯いて、身体の疼きが鎮まるのを待つ事にした。
(そうだ。お水を飲んで落ち着こう……)