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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第33章 呼び出し。


 エレベーターの到着のチャイムが鳴り、扉が開くと僕は転がる様にエレベーターから降りる。正面のプレートで部屋番号を確認すると、走り出したい気持ちを抑えて、目的の部屋まで急ぐ。扉脇のチャイムのボタンを押すと、数秒後に扉が開いた。

 「お疲れ様です」そう言って、扉の中に滑り込むと、部屋の奥へと足早に歩を進める。部屋の真ん中にはダブルベッド。坂内部長はたまちゃんを抱くつもりだったと言う事が伺える。

 盛り上がった布団から覗くたまちゃんの頭。僕は回り込んでたまちゃんの顔を覗き込むと、彼女はすやすやと眠っていた。可愛い寝顔に思わず口付けたくなるけれど、坂内部長がいるのでぐっと堪えた。

 「随分早かったね」と言う坂内部長の声に振り向くと、部長はジャケットを羽織った所だった。

 「僕はタクシーで帰るけど、どうする? 二人で泊まっていく?」

 そう言って坂内部長はニッと笑う。どう言うつもりで、そんな事を言っているのだろう。自分が抱こうとした女性を他の男に任せて、更に泊まるかを尋ねるなんて。

 「正直に言うと、ちょっとホッとしているよ。彼女が酔い潰れてくれて……。勢いで来てみたものの、本当に僕でいいのかなって迷っていたから」

 そう言うと坂内部長は、たまちゃんの顔を覗き込んで微笑んだ。「よく眠っているね」と言って。包み込む様な笑顔。慈しむ目。その顔で、坂内部長がたまちゃんの事を出来心で抱こうとしていたのではないと感じた。

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