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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第33章 呼び出し。


 なるべく人目の付かない様に注意しながらホテルから出ると、自分の車を停めてあるコインパーキングへ、たまちゃんを背負った坂内部長と向かう。たまちゃんを起こさない様に、小声で話しながら。そう言えば、何故、部長は自分で送っていかないのだろう。疑問に思った僕は、率直に尋ねてみる事にした。

 「どうして、ご自分で送っていかれないんですか?」

 「ん? ああ。こんな夜遅くに、僕みたいなオジさんが彼女を送って行ったら、親御さんの心象が悪くなるかと思ってね」

 「でも、真剣に付き合う気があるなら、そんな事も言っていられないんじゃないんですか?」

 僕は、坂内部長の腹の中を探る様に、そんな質問を投げ掛ける。恐らく、坂内部長は戸惑っている。もし、仮にたまちゃんが部長を好きで真剣な交際をするとした場合。坂内部長は離婚をしているから、不倫ではないし、付き合う上では問題がない。けれど、結婚と言う話が出れば別だ。部長には息子さんがいる。それも結構大きな。確か、高校生だった筈だ。大学を卒業したばかりのたまちゃんは、坂内部長よりも、息子さんとの方が年齢が近い。そうなると、息子さんがどう思うかだ。

 部長が息子さんを可愛がっているのは、偶に聞かされる"息子自慢"でよく分かっている。非常にモテる坂内部長が、今まで再婚をしなかったのも息子さんの為だ。

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