おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第33章 呼び出し。
「ああ……、そうだね。うん……。そうだ。やっぱり僕じゃあ、森脇さんには相応しくないな……」
坂内部長はそう言うと、苦笑いを浮かべた。その顔は寂しそうで、見ているこちらが切なくなる。部長はずっとそうやって我慢をしていくつもりなんだろうか。たまちゃんの事を諦めるんだろうか。あんなに愛おしそうな目で彼女を見ていたのに。なんて、僕が心配する事じゃあないのだけれど。部長が諦めてくれれば、ライバルが減るワケだし。
「まあ、息子が成人するまで、後数年は身動き取れないかな……」
そう呟くと、坂内部長は自分の肩に凭れ掛かっている、たまちゃんの頭に軽く頬擦りする。部長はいつからたまちゃんの事を想っていたのだろう。忙しい人だから、そんなに接点があるワケではないのに。でも、面接で篩い落とされる予定だった彼女をAD部へと引っ張ったのは、部長だ。ひょっとして、既にその時から部長の恋は始まっていたのだろうか。
「平川?」
「はい。何でしょう?」
「分かっていると思うが、無理強いだけはしない様にね」
「はい。十分、心得ています。もう、彼女を傷付けたくはないですから……」
「そうか……。それならいい」
「はい」