おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第33章 呼び出し。
それから、車が停めてある場所まで、僕達は無言だった。坂内部長が今後、たまちゃんとの事をどう考えているのかは分からなかったけれど、たまちゃんの事を想っている事だけはハッキリした。
パーキングに着くと、部長には先にたまちゃんを車に乗せて貰う様、鍵を渡し、僕は支払いを済ませる。部長は呼び出したのは自分だからと支払いをしようとしたが、自分の車だからと断った。「その代わり、今度飲みに連れて行って下さい」と言うと、坂内部長はニヤリと笑って「任せなさい」と言ってくれた。
支払いを済ませて車まで歩くと、部長はたまちゃんを後部座席に寝かせ、車に凭れて僕を待っていた。「それじゃあ、僕はタクシーを拾うから」と言って、歩き出す部長を引き留める。ここから坂内部長のお宅までは、そう遠くはないので「送ります」と伝えると、部長は「すまないね」と言って、助手席に乗り込んだ。
五分程走ると、坂内部長が住むマンションに到着。「それじゃあ、また明日」と言って挨拶を交わし、車を発進させる。バックミラーに映る坂内部長は、直ぐにエントランスには向かわずに、僕の車が見えなくなるまで、見送ってくれていた。正確に言えば、僕の車を見送っているのではなく、たまちゃんを見送っているのだろう。
僕は後部座席で眠るたまちゃんをミラー越しに見る。暗いからあまり顔はよく見えないのだけれど。今、この狭い空間に二人きりだと思うと、少しだけドキドキする。電車の中の方が距離も近いのに。今まで、仕事中にエッチな事を沢山してきているのに。