おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第33章 呼び出し。
僕は、運転しながらもチラチラとミラー越しに彼女を盗み見ていた。勿論、大切な人を乗せているのだから、安全運転を心掛けて。会社からたまちゃんの家まで、半分の距離まで来たところで、彼女が身動ぎして目を覚ました。
「ん……」
目を擦りながら、身体を起こすたまちゃんに、僕は「起きたの?」と声を掛ける。彼女は暫く、ボーッとして動かなかったが、次第に頭が覚醒して来たのか、自分が何処にいるのかを確認する様に、キョロキョロと視線を仿徨(さまよ)わせ始めた。
「たまちゃん? 大丈夫だよ。今、君の家へ向かっているからね」
僕がそう言うと、たまちゃんは驚きに目を見開いた後、後部座席から身を乗り出して、僕の顔を覗き込んだ。
「どうして、平川さんが?」
「坂内部長に呼ばれたんだよ。たまちゃんが眠っちゃったから、迎えに来てってね」
「え? アタシ……寝ちゃったんだ……」
そう呟くと、たまちゃんは後部座席に身を沈め、溜息を吐く。その溜息は何の溜息なの? 眠ってしまった事に対しての後悔の溜息? それとも、ここに坂内部長がいないから? 僕じゃあ、駄目なの?