テキストサイズ

おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第34章 アタシの気持ち(その2)。


 それにしても、坂内部長は何で平川さんを呼んだのだろう。家が同じ方向だから? 前にも送って貰った事があって、家を知っているから? そうだとしても、顔を合わせ辛かった。だって、平川さんの気持ちを知っているんだもの。それなのに、アタシは坂内部長と……。

 申し訳ない気持ちで、アタシは何度も平川さんに謝る。嫌われても仕方が無い事をしているのに、それでも平川さんはアタシに優しくしてくれる。

 「お酒を飲んだみたいだから、少し水分を補給した方がいいね」

 そう言って、ペットボトルに入ったスポーツ飲料を差し出してくれる平川さん。その優しさが苦しくて、笑顔で有難うと言いたかったのに、上手く笑えなかった。

 アタシは貰ったペットボトルのキャップを開けると、一口ドリンクを口に含む。乾いた口の中に甘くて冷たい液体が沁み込む。平川さんの優しさの様に。アタシはその優しさに甘えているんだよね。こんなに素敵な人が、アタシの為に出勤を早めてくれたり、こんな風に迎えに来てくれたりするのが、申し訳ないと思う反面、嬉しくもあったりして……。

 アタシって狡い人間だ。山岡さんの事を好きだと思いながら、平川さんや池田先生の優しさに甘えている。ハッキリしない自分の気持ちに嫌気がさしてくる。そんなアタシの気持ちを知ってか知らずか、平川さんは、何度もミラー越しにアタシを見て、微笑んでくれた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ