おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第35章 忙しい連休(その1)。
(はっ! ……ひょっとして、川上さんは気を利かせて……?)
アタシが山岡さんを好きだと知っている川上さん。そして、山岡さん推しの川上さんなら、やり兼ねない。それじゃあ、さっきコソコソしていたのって、悪巧みではなくこの事だったの? でも、急に二人きりにされても、どうしたらいいのか分からないよ。元々、話す事が苦手なアタシは話題も見つからなくて、黙々とウーロン茶を飲み続ける。
(山岡さんっ! 何でもいいから、いつもみたいに話して下さいっ!)
アタシは心の中でそう願うのだが、何故か山岡さんの口が重い。ひょっとして酔っているのかなと思い、顔を上げて山岡さんを見ると、緊張した面持ちで山岡さんもアタシを見ていた。
「モリリン、大事な話があるんだけど……」
そう言って居住(いずま)いを正す山岡さん。アタシも背筋を伸ばして「はい」なんて答えている。傍から見たら滑稽な二人かも知れない。
「ここじゃあ、雰囲気出ないから、出て話そう……」
そう言うと山岡さんは伝票を探した。見つからないのでお店の人に「会計を」と言うと、お店の人は「もう済んでますよ?」と答える。「連れの方が、さっき支払われてお帰りになりましたよ」と。
店員さんの言葉に、「カワのヤツ……」と、ちょっと悔しそうに呟く山岡さんは、グッと顔を引き締めると、アタシを見て「それじゃあ出よう」と言って立ち上がった。