おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第35章 忙しい連休(その1)。
川上さん、そんな風に言ったんだ。意外だった。だってアタシの知っている川上さんは、可愛い顔をした悪魔なんだもの。だから、「言わない」って言っていても、心のどこかでは疑っていたりした。でも、川上さんは、本当は優しい人なんだって分かっている。アタシが自信を持てないのを何とかしようとしてくれたり、相談に乗ってくれたり。今日は、こっそり会計を済ませて、さっさと一人で帰って行った。さり気ない川上さんの気遣いに、アタシはいつも助けられている。
「カワに言われて気付いたよ。そして王子の真っ直ぐさを見てね。自分も見習わなきゃなって。モリリンは悪い事なんてしていないのに、何で傷付ける様な事してんだよって反省もした。んで、自分の気持ちに正直になる事にしたんだ」
遠くの灯りを目を細めて見ながら、山岡さんは心の内を話してくれた。
「自分の気持ちに正直になろうって決めたらさ。どんどん止まらなくなっちゃってさ。あんな事をしちゃったんだけど……。あん時、嬉しかった。モリリンが目を覚ました時、「やべぇ、引かれる」って思ったけど、受け入れてくれて……。そんでさ、告白しようって思った。女の子に自分から告白するなんて、初めてだったから、マジで心臓が壊れるんじゃないかってくらいドキドキしたけど……」
そう言って、はにかむ山岡さんの笑顔に胸がキュンとした。そして、「ああ、この人の事がやっぱり好きだな」って思った。色々と、揺れ動く想いはあるけれど。山岡さんと一緒にいる時が、一番、自分らしくいられるから。
この日の夜は、キスもエッチな事もしなかったけれど。山岡さんと心が繋がった素敵な夜だった。アタシ達は夜景を楽しんだ後、翌日会う事を約束して、それぞれの家に帰ったのだった。