おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第35章 忙しい連休(その1)。
翌日の昼過ぎ、山岡さんとの待ち合わせ場所で落ち合うと、人でごった返す下町を散策した。ちょっと人混みに酔いそうだったけれど、山岡さんが気を遣ってくれて休み休み歩いたから、そんなに疲れる事はなかった。同じ東京に住んでいるのに、アタシがこちらのエリアに降り立ったのは初めてで、物珍しさに心が躍った。
陽が傾き、空の色が濃紺に変わり始めると、アタシは少しドキドキし始めた。今日は、山岡さんとお泊りする事になっている。生まれて初めての外泊。親には、会社で仲良くなった友達の家に泊まりに行くと言って出て来た。両親は、アタシの言葉を信じて、やっとアタシに友達が出来たと喜んでくれて、手土産まで持たせてくれた。その笑顔にちょっと良心が痛む。子供はこうやって親に嘘を吐いて、親離れをしていくのかな。なんて考えて、少し感傷的になった。
晩御飯は、山岡さんのお父様のお店で、軽く食事を摂る事になった。山岡さんはお店に入るなり、カウンターにアタシを連れて行くと、「親父、俺の彼女」と言ってアタシを紹介した。心の準備が出来ていなかったアタシは、緊張して、また「アタタタタ」と噛んでしまった。そんなアタシを見て、山岡さんがお腹を抱えて笑ったので、半分涙目になりながら睨むと、アタシの肩を抱き寄せて、蟀谷に口付けると「ほんと、モリリンって可愛いよなぁ」と言ってニコニコする。そんな風にニコニコされると、何も言えなくなってしまい、アタシが顔を赤らめて俯くと、山岡さんのお父様は、「あんまり見せつけるなよ」と言って苦笑した。