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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第35章 忙しい連休(その1)。


 山岡さんのお父様は、何て言えばいいんだろう。大人の男の人の色気が、いやらしくなく醸し出されていて、ドキドキした。山岡さんもああいう風になるのかな、なんて未来の事を考える。その時のアタシはどうなっているんだろう。せめて、見劣りしないような素敵な女の人になれる様に頑張らなくちゃと、アタシは心に誓った。

 アタシ達がカウンター席に座ると、お父様は「ビールか?」と言ってタンブラーに手を伸ばす。しかし、山岡さんはそれを断ると、アタシと自分用にノンアルコールのカクテルを頼んだ。

 「お前がここに来て飲まないなんて、珍しいな」

 お父様がそう言うと、山岡さんは「今日は大事な夜だからね」と言って、意味ありげな視線をアタシに向ける。お父様はそれだけで全てを察したのか、ニヤリと笑って「頑張れよ」と言って山岡さんの肩を拳で軽くパンチする。そして、アタシの方に向き直ると、「ウチの馬鹿息子を宜しくお願いします」と言って、頭を下げた。「いやいや、お世話になっているのはアタシの方ですから」と言って頭を上げて貰うと、お父様は嬉しそうに笑いながら顔を上げて、お店のお客さん全員に、嬉しい事があったからと言って、一杯ずつお酒を振る舞った。

 お店に来ていたお客さんの大半は地元の人で、子供の頃から山岡さんを知っているみたい。お父様から振る舞われたお酒のグラスを持って、次々に山岡さんと乾杯をしていく。常連さんじゃないお客さんも、「何だかよく分からないけど、おめでとう」と言って、カウンターに向かってグラスを掲げた。何か、アットホームなお店だな。人と人とが繋がっていて温かいのは、きっとお父様の人柄なんだろうなと思った。

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