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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第35章 忙しい連休(その1)。


 山岡さんが優しいのは、きっとこう言う環境で育ったからなのかなと、ふと思う。山岡さんの恋愛のトラウマが、ここで生まれた物だったなんて、アタシは知らなかったから。アタシがそれを知るのは、ずっと先の事だ。何も知らないアタシは、初めて会ったお客さん達に祝福されながら、照れ臭いけど幸せな気持ちで笑っていた。これから過ごす、山岡さんとの夜に、ドキドキしながら。

 「それじゃー、俺達帰るわ」

 山岡さんがそう言って立ち上がる。他のお客さんの相手をしていたお父様は、短く「おう」と言って手を上げ、アタシに向かってペコリと頭を下げたので、アタシもペコリと頭を下げ、山岡さんの背中を追う様にお店を出た。お店の扉が閉まると、不意に肩を抱き寄せられ、チュッと額に口付けを落とされる。そして山岡さんは、「突然連れて来てゴメンな」と謝った。

 「モリリンと気持ちが通じ合えたのが嬉しくてさ、親父に自慢したくなっちゃったんだよね」

 そう言って照れ臭そうに笑う山岡さん。自慢出来る程、アタシは可愛くないのにと言うと、山岡さんは「そんな事ない!」と、力強く否定した。見た目の可愛さは、メイクで何とか出来るけれど、アタシの可愛さはメイクとかじゃなくて、持っている雰囲気なんだと力説する山岡さん。

 「まあ、要するに、俺はモリリンにベタ惚れっつう事ですよ!」

 お道化ながらそう言うと、山岡さんはアタシの手を取り、指を絡める様にして手を繋ぐ。そしてその手を嬉しそうに振りながら、歩き出した。まるで宙に浮きそうな程の軽い足取りに、アタシの心も軽くなる。

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