おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第37章 忙しい連休(その2)。
そうこうしている内に、準備が整ったみたいでダイニングテーブルの方へ呼ばれて行ってみると、「今日はオイルフォンデュにしてみました」と言って、先生がニコニコしながら、食材を乗せたお皿を並べていた。
「材料を切っただけなんで、"料理"とは言えないかも知れませんが……」
そう言いながら、先生が椅子を引いてくれる。「切っただけ」とは言うけれど、皮を剥いたり、下ごしらえをするのは、結構手間がかかるものだ。お料理のは味付けだけで決まるものではなく、手間を掛けて下ごしらえをした方が、美味しくなると言うのは、アタシの持論である。
アタシの母は、どんなに忙しくても、お出汁は鰹節や昆布や煮干しからちゃんと取るし、市販の「○○の素」みたいな、入れれば簡単に料理が完成する調味料は一切使わない。時々手伝うのだけれど、結構面倒臭い。でも、好きな人に食べて貰う事を考えたら、手間を掛けるのは、案外苦ではないのかなと思った。アタシも山岡さんに食べて貰うなら、手間を掛けて美味しい物を作りたいもの。
先生の「切っただけ」の材料も、火が通り易い様に隠し包丁が入っていたり、面取りがされていたり、丁寧な仕事が為されている。しかも目が揃っていて凄く綺麗なのは、先生の性格なんだろうか。