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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第38章 忙しい連休(その3)。


 「たまちゃん……」

 平川さんは崩れ落ちる様にアタシの隣に座り込むと、アタシの肩に腕を回し、抱き寄せる。平川さんは、アタシの頭を胸に抱き寄せると「怖かっただろう?」と言って、何度も頭を撫でてくれた。

 「何故だか僕は、いつも君のこういう場面に出くわしてしまうね……。もっと早くに来れていれば……」

 そう言うと平川さんは、ギュッとアタシの頭を抱きかかえる。その身体は震えていて。声は苦しそうで。前に痴漢から助けて貰った時の事を思い出した。あの時の平川さんも、怒りに震えていて。その後に告白されたんだったっけ。なんて思い出している場合ではない。

 平川さんはアタシと二人だけの世界を作ってしまっているけれど、アタシは周りの女性達からの視線をビシバシ感じていて。かなり居心地が悪い。

 「平川さん……。あの、もう出ませんか?」

 アタシがそう言うと、平川さんはゆっくりとアタシの身体から離れ、「もう、大丈夫なの?」と顔を覗き込んだ。その顔はとても心配そうに歪められていて。その苦悩の顔がイケメン振りに色気を加えていて。店内の女の人達が、平川さんをチラチラと見ているのが視界に入る。

 周りの視線が痛いよ。けれど、心配してくれている平川さんを突き放す事も出来なくて。アタシは黙って頷くと、平川さんはやっと安心した顔をして微笑んでくれた。そして、「それじゃあ、出ようか」と言ってトレーを持って立ち上がる。

 アタシは、店内の女性陣の嫉妬の視線を浴びせられながら、平川さんに手を引かれて、お店を後にしたのだった。

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