おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第38章 忙しい連休(その3)。
平川さんは、アタシの言葉を聞くと、笑っていいものなのか、心配するべきなのかと迷っている様に、複雑な表情を浮かべた。そして、コンビニの前に車を停めると、「ちょっと待っててね」と言って、お店の中へ入っていく。そして、何かを買い求めて戻ってくると、「取り敢えず、これを穿いておきなよ」と言って、袋を手渡してくれた。
袋の中身は女性用のショーツだった。「コンビニだから、可愛いのがなくてゴメンね」と言って、平川さんは苦笑したが、アタシは平川さんの気持ちが嬉しかった。男性なのに、女性用の下着を買い求めるのは、幾らコンビニでも勇気が要りそうだもの。平川さんは、人通りの少ない脇道に車を停めてくれ、アタシはそこでショーツを穿いた。
そして車は再び走り出す。辺りはすっかり暗くなり、街にはネオンや街灯が灯っていた。平川さんは、アタシを気遣って、ずっと一人で話している。昨日は一人で箱根に足湯に浸かりに行った話とか、実家に顔を出して、愛犬に会ってきた話だとか。アタシはそれに、相槌を打ちながら、話に耳を傾けていた。
「ご実家では、ワンちゃんを飼ってらっしゃるんですね」とアタシが言うと、「実は猫もいるんだけど、外出中だったんだよね」と言って平川さんが笑った。他にも、インコやらフェレットやら、色々と実家では飼っているらしい。愛犬の犬種を尋ねると、ゴールデン・レトリバーだと教えてくれた。
ゴールデン・レトリバーか。何だか平川さんのイメージにぴったりかも。優しそうで上品な顔立ちをしているゴールデン・レトリバーは、何となく平川さんと似ている気がした。アタシがそう言うと、平川さんは、「僕って犬っぽい?」と尋ねてきた。