おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第39章 接触事故。
「モリリン、こっちにお出で」
そう言って山岡さんは手招きをすると、アタシに椅子に座る様勧めた。診察用の丸椅子に座ると、山岡さんはアタシの前に立ち、顔を覗き込む。
「ちょっと鼻の頭が赤くなってるな。でもすりむいてないし、ちょっと軟膏でも塗っておくか?」
山岡さんは、薬品棚から打ち身用の軟膏を見つけ出すと、蓋を開けてチョンチョンとアタシの鼻の頭に薬を塗る。ちょっとぶつけただけだし、鼻血も出てないのに医務室に来るなんて、大袈裟だったんじゃないだろうか。アタシがそう言うと、山岡さんは「治療と言うのは、建前に決まってるだろ?」と言って、アタシを椅子から立ち上がらせると、ベッドへと引っ張って行き、カーテンを閉めた。
「ちょっ!? 山岡さん?」
ベッドに座らせられたアタシが立ち上がろうとすると、山岡さんはそれを阻んでアタシを押し倒す。「会いたかったよ」と言って抱き締められると、それだけで嬉しくて。池田先生が来るかも知れないと言うリスクを忘れて山岡さんをギュッと抱き締め返す。
「アタシも……。どうして連絡をくれなかったんですか?」
思わず口を吐いて出た言葉に「しまった」と思ったけれど、もう後の祭りで。アタシの言葉に山岡さんは、「ゴメンな」と言ってアタシの頭を撫でてくれたけど、理由は話してくれない。それが、何だかモヤモヤしてしまう。どんな事でもいいから、ちゃんと話して欲しいのに。