おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第39章 接触事故。
アタシに言えない事なんだろうか。ひょっとして、家族で親戚の家に行ったと言うのは嘘で、他の女の人と一緒に居たのではないか等と、疑ってしまう。そんな醜い感情を持つのは嫌なのに。人を好きになると、楽しいとか、優しくしたいとか、良い感情ばかりではないのだと、改めて感じた。
きっと、アタシは今、醜い顔をしている。そんな顔を見られたくなくて。アタシは山岡さんの胸に顔を埋めて黙っていた。何と言えばいいのか分からない。口を開いたら、嫌な事を言ってしまいそうで。そんな事、アタシに言う権利なんてないのに。アタシだって池田先生や平川さんと一緒に居たのだもの。だから、山岡さんが話してくれないのであれば、深く追求してはいけない。アタシって狡いなと思う。
「モリリン。俺さ、家を出ようと思うんだよね……」
山岡さんは、アタシの髪を梳きながら、唐突にそう言った。「どうして?」と顔を上げると、山岡さんはアタシともっと一緒に居たいからだと言う。それはとても嬉しいけれど、ご家族には相談したのだろうか。アタシはそう尋ねると、山岡さんは「もういい年だし、そんな事は家族に相談しないよ」と言って笑う。けれど仲の良い妹さんを置いて、家を出るなんて出来るのだろうか。
「そうだなぁ……。妹の事は正直言うと、気にはなるけど……。今の俺には、モリリンと一緒に居る方が大事だからさ?」
山岡さんは、今回の親戚の家への家族旅行は、これからは頻繁に会えなくなる妹さんへの罪滅ぼしのつもりだったのだと、だから妹さんの気の済むまで遊んであげていたから、連絡が出来なかったのだと、連絡をしてくれなかった理由を話してくれた。