おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第39章 接触事故。
「大体、お元気そうなのに、医務室に何の御用があっていらしたんですか?」
そう言って池田先生は、ニッコリと笑顔を見せたけれど。その目は笑っていなくて、アタシの背筋は凍り付きそうだ。
「ああ、それはですね。モリリ……森脇さんが、ドアに顔をぶつけてしまったので、薬を頂こうかと……」
「何ですって? 森脇さん、大丈夫なんですか? ちょっとこちらにいらして下さいっ!」
山岡さんの言葉を聞いて、池田先生は慌ててアタシの腕を掴むと、診察台の方へと引っ張っていく。そして診察用の簡易ベッドの上にアタシを座らせると、両手でアタシの頬を包んで、まじまじと顔を見た。
「傷はついていない様ですね? ここは痛くありませんか?」
そう言って先生は、アタシの鼻の頭をちょっと押した。ちょっと痛いけど、何ともないと伝えると、先生は「痛いんですね?」と尋ねる。
「ちょっとだけです。大した事はないと思います」
「でも、痛いのでしょう? それじゃあ、おまじないです」
そう言うと先生は、「痛いの痛いの飛んでいけ」と言って、アタシの鼻の頭にチュッと唇を落とした。それは、ほんの一瞬の出来事で。アタシは池田先生を止める間もなかった。