おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第39章 接触事故。
「ヤバイ」と思った瞬間には、もう遅くて。池田先生が「おまじない」と言って、アタシの鼻の頭にキスした所を目の当たりにし、山岡さんは目を見開いた。
「どう言う事だ? 先生、貴方は女子社員にそんなセクハラ治療をしているんですか?」
そう言って山岡さんは、池田先生を睨む。池田先生は山岡さんの視線に狼狽(うろた)える事もなく、笑顔で「いいえ」と答えた。「森脇さんにだけ。彼女は"特別"なんですよ」と、"特別"と言う言葉に力を込めて言い、山岡さんを挑発するように深い笑みを見せる池田先生。二人の視線が絡まり、青い火花が散っている様に、アタシの目には映った。
(ああっ……。ど……どうしよう……)
アタシは、完全に「終わった」と思った。きっと山岡さんに嫌われてしまった。出来る事なら、この場から逃げ出したい。そう思っていると、山岡さんはツカツカと近付いてきて、アタシを立ち上がらせると、肩を引き寄せて池田先生にこう言った。
「いつの間に仲良くなったのかは知りませんが、彼女の恋人は俺です。彼女を好きになるのは先生の自由ですけど、「特別」と言って、こう言う事をするのは、今後、止めて下さい」
すると池田先生は、「森脇さんは貴方の恋人かも知れませんが、所有物ではないでしょう? 私は、彼女と合意の上で治療をしています。部外者の貴方に、私が彼女に行う治療をどうこう言われたくないのですが?」と、冷ややかな目で山岡さんを見据えてそう言った。