おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第39章 接触事故。
「貴方方が、入社日に彼女を傷付けた事を貴方はご存知ですか? 私はその時から、彼女をずっと心と身体のケアして来たんです。つい最近、恋人になった貴方に、どうこう言われる筋合いはないんですよ」
池田先生がそう言うと、山岡さんはハッとした顔をした。そして、アタシから顔を背け、暫く何かを考え込んでいたが、視線を池田先生に戻すと、「分かりました」と静かに言った。
「えっ」とアタシが顔を上げると、山岡さんは微笑み、アタシの額に口付ける。そして、ギュッとアタシを抱き締めると、その後に身体を離した。
(今のはどう言う意味なの? 何で離れるの? お願い。アタシから離れないで!!)
そう思った瞬間には、アタシは山岡さんの腕に縋りついていた。振り払われたらどうしよう。そんな事を思ったが、山岡さんはホッと息を吐くと、池田先生に向かって、「彼女が必要としているのは、俺の腕です。貴方の治療にとやかく言うのは止めますが、彼女を傷付けるような事はしないで下さい」と静かに言った。そしてアタシに向き直ると、顔を覗き込み、「俺の事、好き?」と尋ねる。アタシが速攻で何度も頷くと、「それならいいよ」と言って、アタシを抱き締める山岡さん。
「俺を一番に好きでいてくれるのなら……。少しくらいは、我慢するよ。どっちにしろ、部署が部署だしな。でも、苦しくなったら、正直に言ってくれ。俺はモリリンが傷付くのは見たくないから。一人で抱え込まないで、俺に何でも話して、な?」
山岡さんは、アタシの耳元でそう言いながら、アタシの頭を何度も撫でた。アタシだって、山岡さんが傷付くのは見たくない。けれど、アタシは山岡さんを傷付けているんじゃないだろうか。