無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　「山岡さんもっ……！」

　アタシは堪らなくなって口を開くと、山岡さんは「ん？」と首を傾げながら微笑む。

　「山岡さんも、一人で抱え込まないで。アタシじゃ何も出来ないけど……」

　アタシがそう言うと、山岡さんは「有難う」と言って、またアタシの頭を撫でる。「じゃあ、一つだけモリリンにお願いがある」と前置きして、山岡さんは微笑みを消すと真剣な目でアタシを見つめた。

　「ずっと、俺の事を一番好きだって感じさせて……」

　そう言う山岡さんの瞳は、切なげに揺らいでいて。アタシはその瞳に胸が締め付けられた。

　男の人と付き合った事がなくて、異性を憧れではなく、身近な恋愛対象として見るのも初めてなアタシは、正直に言って、どうすればいいのか分からない。だけど、山岡さんを一番に想う事、それを態度で示す事。それだけは出来ると思う。アタシは、山岡さんの瞳を見つめながら頷き、そっと山岡さんの胸に身体を預ける。

　すると、池田先生が咳払いをし、「二人だけの世界を作らないでくれるかな？」と、顔を引き攣らせながら言った。「すみません」と言って、アタシ達は身体を離すと、お互いを見て首を竦めて笑い合う。

　だけど、池田先生の気持ちを知ってしまったアタシは、胸が切なかった。一人を大事にすれば、他の人の気持ちには応えられない。全員を「同じ様に一番」なんて、アタシには出来ないから。