おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第41章 川上達哉という男(その3)。
まあ、身体が弱っている時に、そんな事をされたら、グッと来るのは分かる気がする。一人暮らしだと、心細いし。ヤツは男友達は居たけれど、看病してくれる女の子の友達はいなかったから、余計に心に響いたのだろう。彼女を女神の様に崇拝していた。
「わざわざ看病しに来てくれるなんて、お前の事、好きなんじゃね?」
俺がそう言うと、まんざらでもなさそうで。だったら告白して付き合っちゃえばと唆(そそのか)したのは俺だった。けれど、なかなか告白する勇気が出ないらしく、だったらデートに誘ってみればとアドバイスをしたら、「一人じゃ無理」と言って、俺に何人かで遊びに行く様、誘ってみてくれと頼んで来た。それじゃあと、俺は一肌脱ぐ事にして、彼女と彼女の仲の良い子をテーマパークに誘った。
俺は出来るだけ、ヤツと彼女が仲良くなれる様に、色々と取り計らった。その甲斐あってか、暫くしてヤツと彼女は付き合い始めたと報告を受けた。彼女の事を嬉しそうに話すヤツを見て、俺は自分の苦労が報われたと、嬉しかった。そして、アイツに彼女が出来て、少しずつ社交的になっていく、アイツの成長振りも嬉しく思っていた。
どうやら初めての彼女だったらしく、ヤツはどんどん彼女にのめり込んでいった。「恋は盲目」とはよく言うけれど、正にそんな感じ。だから、ヤツは彼女の悪い所なんて、一つも見ようとしていなかった。と言うより、見えていなかったんだろう。彼女の本性をヤツは知らなかった。